学校保健優良学校

 本校の保健指導に対して,令和元年度には鹿児島県から,令和2年度には文部科学省の学校保健優良学校を受賞しました。本校の取組について令和元年度にまとめたものを掲載します。


1 はじめに
 本校はむし歯治療率100%が8年間継続している。そして「令和元年度鹿児島県学校保健,学校安全,学校体育及び学校給食表彰に係る優良学校」において学校保健優良学校として賞を受けることとなった。むし歯治療率に関しては学校はもちろん地域や保護者の関心も高く,毎年宇宙留学生を抱えながらもむし歯治療率100%を継続している。
 このような環境の中で,これまで養護教諭が給食後の一人一人の歯みがき指導や歯の健康について随時指導してきたことと,歯科検診の結果を受けて保護者が歯医者に行くように即時対応し,さらに子供の歯の健康のために年2回の定期検診も行わなければいけないという意識の高さが培われてきたものである。また本校は少人数のため,個に応じた指導もしやすく,保護者も協力的で,学校と保護者が連携して子供の健康の保持増進に積極的に行っている。

2 研究主題
 本校の保健指導の成果と課題について~学校と保護者の連携を中心に~

3 研究の実際
(1) 学校保健全体計画の作成
 本校では学校目標を受けて,下記のような学校保健全体目標を設定している。

【本校の学校保健目標】
 自分の成長の様子や健康状態に関心をもち,積極的に健康の保持増進に努める態度や実践力を育てる。特に重視したいのは児童の「積極性」であり,主体的な児童の態度や実践力の育成である。そこで,保健指導の各領域で「特色ある実践」を設定し,養護教諭を中心として児童に積極的に働きかけることにより,まずは自分の成長の様子や健康状態に関心をもつことができるのではないかと考えた。

(2)「健康教室」の実施
 本校では月に1度,「健康教室」を開催している。児童の健康に関する興味・感心を高め,健康生活の実践化を図ることが目的である。本年度は下表の内容で計画している。さらに本年度町養護教諭部会の共通実践である「自尊心を高める取組」を健康教室で実施している。毎回養護教諭の目線でその児童の「よいところ」「がんばっていること」などを全校児童の前で紹介している。
 健康教室は児童が継続的にその時期に応じた健康に関する課題や話題に振れ,児童の健康への関心を高める場となっている。

(3) 家庭との連携
 本校では家庭との連携を通して保護者の啓発と家庭での実践等を進めている。具体的には毎週末の歯みがきチェック,毎月のノーメディア週間のプリントを「長谷っ子ファイル」というファイルにして各家庭に配付している。ファイルは毎週持ち帰り,週末の1日だけ保護者がみがき残しチェックをしたり,仕上げ磨きをしたり,感想を書いたりしてもらっている。提出された物は,毎回担任と養護教諭がチェックして,コメントを記入しており,保護者とのやりとりにも役立てている。
健康診断については,検診結果を即時保護者へ配布し,むし歯の治療等を積極的に呼びかけている。また,毎学期の学校保健委員会では歯の健康をテーマとし,委員会の取組の一つとして年2回の定期検診を行うことを具体目標に掲げ,冬休み前にも歯科検診等の定期検診の案内を配布し,学級PTAでも呼びかけを行っている。健康診断の検診結果を一度配付するだけでなく,その後も継続的に呼びかけを行うことで,むし歯治療率の向上はもちろん,それ以外の疾病についても治療を行うことができている。

(4) 外部人材の活用
 本校では外部人材を積極的に活用している。担任や養護教諭以外の人材を積極的に活用することで,児童の健康への興味や関心は高まっていくと考える。実際,専門的な知識を児童にもわかりやすい形で具体的に講義してくださる講師が多く,人材を活用した授業後のアンケート等からは外部講師や,担任・養護教諭が意図した指導内容を児童がよく理解していることが伺えた。それぞれ専門的な立場からの指導により,担任による指導とはまた違う角度でそれぞれの課題について考える機会となった。

(5) 歯科指導の充実
 歯科指導については,年1回以上外部の指導者を招聘し,専門的な立場から指導を行ってもらっている。本年度は,保健所の歯科衛生技師による染め出し液によるみがき残しチェックを行い,日頃の自分の歯みがきの仕方がどうなのか,視覚で確認することができた。児童も自分の歯を見て,磨けていない部分の磨き方を学ぶことができた。
学校では給食後に砂時計を各自使用し,鏡を見ながら歯みがきをした後,養護教諭による歯みがきチェックを毎日行っている(左上写真)。毎日見ることによって,子どもの口腔の健康状態が分かり,生え替わりや個別指導の時間にも繋がっている。子どもたちも毎日の歯みがきチェックが習慣化しており,気になる歯や口腔の状態について質問したり,報告したりする場になっている。
保護者との連携として,毎週歯みがきチェックをしてもらうために長谷っ子ファイルの活用をしている。仕上げみがきをしたり,みがき残しチェックをしたりして,月曜日にファイルを学校に提出してもらっている。そのファイルを活用して,治療の促進を図ったり,定期検診の推進を行ったりしている。

(6) 感染症予防への取組
 感染症予防については日常的には換気・マスク・手洗い・うがい等基本的な予防に努めている。インフルエンザの流行の時期など,特に指導が必要な時期には養護教諭から担任へ,具体的な指導内容と対応策について示し,それに基づいて担任は指導に当たったり,学級通信等で保護者へ周知したりしている。昨年度はインフルエンザ流行の時期になると毎日お茶を入れて,うがい用・飲用として子供たちに提供した。そして西之表市保健所から出させる「種子島感染症情報」は毎号職員へ回覧し,要注意の情報についてはマーカーで印をつけ職員へ回覧し,注意喚起を図った。

(7) 食に関する指導
 栄養教諭は普段は他校に在籍し,実際は給食センターの栄養士として勤務している。普段から本校の教育活動へも協力的であり,食物アレルギー児童への対応についても尽力いただいている。下左上写真は栄養教諭による食に関する指導の様子である。食器の正しい持ち方やマナー等についての指導を中心に講義をしていただいた。専門的知識をもつ栄養教諭による指導を行うことで,児童は給食事のマナーの大切さ,衛生面に気を付けた準備の仕方,バランスのとれた食事のとり方等を理解することができていた。また同日に給食試食会も実施し,給食準備や実食の参観も行った。
 毎月1回(現在は見合わせている),全校児童で給食を摂る「なかよし給食」を実施している。誕生月・掃除の縦割り等テーマを決めてグループ編成を行い,給食委員会の児童が献立紹介・誕生日の紹介等を行っている。児童には会食のよさを味わわせると共に,給食や食への関心を高めることにつながり,教師には給食指導のあり方を見直す機会となっている。また,異学年・他の先生方・他校からいらっしゃる専科やALTとの交流の場となっている。なかよし給食の進行は給食委員会の子供たちが担い,献立紹介やその月の誕生日の子供たちの紹介を行っている。時折養護教諭による食事マナーの指導,給食巡回中に気になることなどの指導,栄養指導等の機会となっている。子供たちもいつもよりにぎやかに給食を食べられると,なかよし給食を楽しみにしている。

(8) 薬物乱用に関する指導
 薬物乱用に関する指導については他の学校と同様,保健や学級活動の中で計画的に進めている。先程紹介したが,学校薬剤師を招聘したり,ビデオ等を活用したりして発達段階を考慮した指導に努めている。同時に主に保健便りに特集を組んだり,パンフレットやポスター等を配布し保護者への啓発にも努めたりしている。

5 成果と課題
(1) 児童の積極性・主体性の育成という観点から
 本校の児童は素直で明るく元気で,たくましさもあり,元気に校庭で遊び,授業にも取り組めているが,自分から進んで健康的な生活を送ろうとする態度はまたまだ身に付いていない。本年度の取組を通して,児童に積極性や主体性を伸ばすことの難しさを感じた。今後は委員会活動や集会活動の運営のあり方等についても見直し,改善を図りたい。
 実際,歯みがきの仕方についても,家庭や学校の見届けを行っても,個にあった磨き方が身に付いておらず,みがき残しが多い。みがき残しがあることをもっと視覚的に理解させ,自分事として考えさせ,将来的な口腔の健康に繋がるように指導が必要である。

(2) 地域や家庭との連携という観点から
 本校の保護者や地域の方は,学校に協力的である。また,保護者自身がしっかり子育てをしていこうという意識が強く,そのことが日々の保護者とのやりとりの中で見られる。さらに学校側のお願いすることをしっかりと行ってくれる家庭も多い。
 一方で共働きの保護者がほとんどであり,時間に余裕がない家庭も多くなってきている。そのことを踏まえながら,単に保護者にお願いするばかりではなく,親子で健康生活を送るための簡単で長続きする保健指導が必要である。自分の子供の将来のために何が必要かをしっかりと保護者に伝え,一緒に子供を育てていくということを家庭も保護者も意識することが必要である。